興味を持っていることについて
かねてから自分に何か取り柄があるとすると、好奇心が強くてこの歳になっても学習意欲が衰えていないことかなと思います。実際、今も暇を見つけては学習していることがいくつかあるのです。若干マニアックな内容になりますが、今月はそのお話をさせていただきます。

まずは今、学習しているプログラミング言語です。
以前、自分がコンピューターを使い始めたのは30歳を過ぎてからだったという話をさせていただいたことがあります。でも実は高校時代の数学の授業で初めてアルゴリズムを習ったときに、実際に問題を解くのではなく「どうすれば問題が解けるのか」という過程を考えていくことに新鮮さを感じ、それ以来プログラミングには少し関心をいだいていたのです。
コンピューターを使い始め、実際に自分でプログラムを組んでみるとなかなかおもしろく、それからは多くの言語を少しづつかじってきました。列挙すると、C言語、C++、Pascal、PHP、Ruby、Javascript、Python、Scala、Swift等です。
現在は、このホームページのシステムを作っているPythonや、電子工作でマイクロコンピューターにプログラムを書き込むためのC言語をよく使っています。
ただ一番興味を持っていて、これからも学習していきたいと思っているのはこれらの言語ではなく、Haskell(ハスケル)という言語なのです。
普段コンピューターをお使いの方でもHaskellという言語はあまり耳にされたことがないのではと思います。でも毎年行われているプログラミング言語の人気ランキングを見ると、20位くらいにはランキングされているのです。数多くの言語がある中で20位というのは「意外に検討している」といったところだと思います。ただし「仕事で使っている言語は?」というランキングになると50位くらい、1%にも満たない割合のようなので、ちょっと趣味的でマニアックな言語なのかもしれません。
自分がこの言語に興味を持ったのは何年か前にある卒業生から話を聞いたのがきっかけです。その卒業生は在校時から数学や数理哲学に興味を持っていたので、久しぶりに会ったときに「最近は何に興味がある?」と尋ねたところ、一言「Haskell」という答えが返ってきました。
それまでHaskellという名前は知っていたけど内容は全く知らなかったので、さっそく調べてみるとこれがなかなか面白そうだったのです。 
Haskellという言語は「関数型」というタイプの言語で、それまでに自分が学んでいた「手続き型」というタイプとはかなり違ったものです。「手続き型」は文字通りコンピュータに問題を解かせる手続きをプログラムするのに対し、「関数型」では考えている対象を分析し、そのモデルとなるシステムをプログラムで構築するようなところがあります。そのためプログラムを組むにはかなり違った発想が必要になり、それがとても新鮮で面白かったのです。そして慣れてくると「手続き型」と比べると驚くほど短いコードで簡潔にプログラムできることに感動しました。
Haskellは数学の「圏論」という理論をベースに作られた言語です。多くの言語が使い勝手を優先するために、どこか曖昧な部分、良く言えば融通の効く部分があるのに対し、Haskellは隅々まで考え抜かれた、本当にキチンとした美しい言語です。ただそのぶん難しいことも多く、完全に理解するためには「圏論」の理解も必要です。それでも「理解したい」という気持ちはまだまだあるので、「圏論」も含めこれから先も少しづつ学習していきたいと思っています。

もうひとつ最近興味を持っていることに「脳科学」があります。
これは「脳の寿命を決めるグリア細胞」(岩立康男著)という本を読んだのがきっかけです。
この本を手にとったのは、自分の祖父がグリア細胞の研究者だったこともあり、題名の中に入っている「グリア細胞」という言葉に目がとまったからなのですが、そもそも脳に関する本を読もうと思った背景にはもう少し込み入った事情があるのです。
以下その事情を説明しておきます。
自分は以前から「意識」や「感覚」とはいったい何なのか? それは何時どのように発生したのか?ということに疑問を持ち、あれこれ考えたり、そうしたことに言及した本を読んだりしてきました。そんな中でこれらに対する最終的な答えにたどり着くことは出来ないのではないか。こうしたことは哲学者のウィトゲンシュタインがいう「語り得ないもの」であり、特に科学の言葉で説明することは不可能なのではないかと思い至るようになりました。
ただ一方では脳科学者の中には意識の発生を科学的に説明しようと努力を続けておられる方がおられることも知っています。そして「無理なのでは?」とは思いつつも、こうした方たちの努力がどれくらいの成果を上げているのかは常に気になっていたのです。
そうした事情から最新の脳科学の成果について知っておこうと思ったことがこの本を読んだ背景にあったのです。
読んでみると脳科学がすごく進化していることに驚きました。
祖父が生きていた頃は透明な脳細胞を様々な手段で染色し顕微鏡を覗き込んで観察するのが研究手段でした。ところが今はMRIなどの計測機器が発展し、脳の中で何が起きているのかが飛躍的に解明できるようになっているようです。
そうした最新の知見に基づき、ニューロンに比べると脇役的なものと考えられていたグリア細胞が実はニューロンと連携して複雑なシステムを形作っており、重要な役割を担っていることが本書で紹介されています。著者の岩立氏は脳神経外科医であり、その立場からグリア細胞の重要性を指摘されているのであって、自分が関心を持っている意識の問題に言及されているわけではありません。ですがこうした最新の脳科学の成果を知ると、脳科学の立場から意識や感覚の問題を探求されている方たちの探求もだいぶ進んでいるのではないかと想像できます。そんなわけでそうした方たちの著作も読みたいと思っている次第です。

実はこれ以外にも興味があって学んでみたいことはまだまだあります。
先月話題にした民主主義と教育の問題や地球温暖化の問題などはこれから先のことを考える上で絶対に避けられない問題ですし、もっと基礎的なこと、例えば言語学や物理学の分野でも学んでみたいことはたくさんあるのです。
たぶん自分が暇を持て余すことは当面あり得ないのではと感じています
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