新型コロナウイルスのこと
新型コロナウイルスが猛威を振るっています。
今この文を書いている3月27日の段階で感染が確認された方は全世界で50万人を超え、亡くなられた方も2万3千人を突破しました。徹底した封じ込めにより既にピークを超えた国、地方もあるようですが、全世界の状況を見ると感染の拡大はむしろこれから勢いを増すのではないかと懸念されます。
このウイルスの厄介なところはその強い感染力もありますが、むしろ人によって症状の軽重が異なることにあるのでははないかと思っています。
これまでの統計によると感染された方の約2割が重症化しその半分ほどの方が人工呼吸器を必要とする重篤な状態になるようですが、残りの8割の人は症状がなかったり、あっても風邪ていどの軽症で済むようです。
これがなぜ厄介かというと症状がなかったり軽症な人でも他者に感染させる可能性があるにもかかわらず、自覚のないまま普段どおりの生活をし、結果として感染を広げてしまっている危険性があるからです。
なるべく多くの人が検査を受け感染の有無を確認し、それに基づいて行動すればよいのですが、現状ではすべての人が検査を受けるような体制はないし、もし検査の時点で陰性であってもその後に感染する可能性もあるので、感染のルートを完全に明確化することは不可能だと思います。
日本国内で感染例をみると、初期の頃は海外の感染地域からの帰国者や外国人観光客との接触者であったり、屋形船やライブハウスといった特定の場所におられた方などがほとんどでしたが、しだいに感染ルートが不明な方が増えてきています。実際3月25日、26日に発表された東京での感染者の4割はどこで感染したかわかっていません。
いつ頃からこうした状況になったのかはわかりませんが、現実として何処でどのように感染が広がっているのかが見えなくなっており、これからは「見えない敵」と戦うことを余儀なくされるのだと思います。
そしてこの段階になると、諸外国で既に行われているように、すべての人が他者との接触を控えるという徹底した対応しかなく、特に不特定多数の人との接触が多い大都市圏では対策が急がれると思います。

ではこうした中で日本の学校はどのような状況になっているのでしょうか?

日本では2月の末に全国の小学校、中学校、高等学校に政府から2週間の休校要請がだされました。
それをうけ生野学園でも2週間早い春休みに入っています。
その後、文部科学大臣の「全国一律の休校要請は続けない」との談話があり、文科省は学校再開に向けてのガイドラインを発表しました。それは学校を再開するために「取るべき対策」や「クリアすべき条件」などを指定するものです。
これを受け地域の状況をふまえた上で各自治体、各学校が学校の再開を判断することになっています。
これは「休校措置が子どもたちに与える影響」「家庭への負担」などを考え「どうすれば学校を再開できるのか」という考えから出された方針だと思います。

ただ前述したように日本での新型コロナウイルスをめぐる状況は2月末に休校要請が出された時よりも深刻になっているのではないかと思います。
文科省のガイドラインにも
「専門家会議では(中略)『諸外国の例をみていても今後,地域において, 感染源(リンク)が分からない患者数が継続的に増加し,こうした地域が全国に拡大 すれば,どこかの地域を発端として,爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながり かねない』と分析されています。地域ごとの状況に応じた,一人ひとりの「行動変容」 や「強い行動自粛の呼びかけ」が重要である状況に,変わりありません」
と記載されているのですが、ここでいう「感染源がわからない患者数が継続的に増加」ということが既に起きつつあるのが現状ではないでしょうか。

こうした状況の中で生野学園はどのような対応をするべきなのか?
今、自分が考えていることをお話しようと思います。

まず生野学園は全寮制の学校ですので、学校再開にあたっては寮生活のことを考えなければなりません。前述の文科省のガイドラインでは『集団感染リスクへの対応』という項目の中で次の3つのことが重要であると指摘しています。
1 換気の悪い密室空間にしないための換気の徹底
2 多くの人が手に届く距離に集まらないための配慮
3 近距離での会話や大声での発生をできるだけ控える

正直にいうとこれを寮生活の中で実現していくのは相当にハードルが高く、どのような方法が可能なのか苦慮しているところです。今後慎重に検討していく必要があります。
また生野学園は兵庫県朝来市の学校ですが、週末帰宅を実施しており大阪、神戸などの大都市圏に家のある生徒が多数います。感染ルートが見えなくなってきている状況の中では、生徒たちが通学中に感染のリスクに晒されることも十分に考えないといけません。

こうした条件を考えると、感染の拡大を避け、子どもたちの安全を確保するためには学校再開についてかなり慎重に判断する必要があると思っています。
最終的な判断はもう少し状況をみてからにしますが3月中には学校としての判断を下すつもりです。

新型コロナウイルスとの戦いが今後どの様になっていくのかは現時点ではわかりません。
ただ直感的には「かなりの長期戦」になるのではという印象を持っています。
その中では経済活動が衰退したり、生活スタイルの変更を余儀なくされることもあるでしょう。そして残念なことに身近な人の死に向き合わされる人も多くでてきてしまうかもしれません。
また、この事態への対応をめぐる社会のあり方そのものも考えないといけないかもしれません。
これから起こるであろう様々なことを考えると「危機に直面した私達の生き方そのものが問われている」のではないか? そんな気もしています。
お問い合わせ
資料請求
見学受付