以前、不登校の子どもたちにとって高校卒業の資格を取ることは困難な課題でした。
しかし、最近は便利になって、家に居たままで、あまり人と関わらなくても高校卒業資格を取得できるようなシステムも生まれてきました。
でも、少し考えてみて欲しいのです。
本当に資格を取るだけで大丈夫なのかと。
子どもたちはやがては社会に出て行かなければなりません。そのときに必要とされるのは、人の中で自分を表現する力、人の気持ちを理解し共感する力、人と協力して物事を進めていく力、自分自身を律していく力、一言で言ってしまえば「社会の中で生きていく力」なのではないでしょうか。確かに資格や学歴は役に立ちます。でもそれだけでは不十分なのです。高い学歴を持っていても社会に出ていけず苦悩している人たちが数多くいる現状を考えると、子どもたちにとって「社会で生きる力」を身に付けることは最重要の課題なのではないでしょうか。
それでは、どうしたら「社会で生きる力」を身に付けることが出来るのでしょうか?
まず注意すべきことは、この力は知識ではなく実際に人と関わる体験を通して獲得する能力だということです。しかもそれは必要になったら身に付けることのできるスキルのようなものでもありません。なぜなら、それは子どもたちが人と関わりながら成長し人格形成していく中で獲得される能力であり、人格の一部をなすものだからです。
本来、子どもたちは小さい時は親と過ごしますが、成長するにしたがって子どもたち同士で「社会」を作り楽しく遊ぶようになります。そこに地域の年上の子どもや大人たちが関わることで、沢山の貴重な体験をしてきました。このような環境の中で『社会で生きていく力』は自然に身に付いていったのです。
しかし残念なことに地域社会のこうした環境は、近年着実に衰退してきています。その分、学校に全てが任されるようになってきましたが、多人数で、時間が限られ、教員も多忙を極める今の学校環境の中では、皆が一律の行動をすることが求められ、楽しく豊かな体験をすることが難しくなっています。そして、こうした中で学校に行けなくなった子どもたちはさらに難しい環境に置かれているのが現状です。
生野学園が全寮制としているのは、昼夜を共にする生活の場で子どもたちが同年代の友と過ごし、様々な大人たちと出会うなかで成長してほしいと願っているからです。先に述べたように「社会で生きる力」はこうした環境の中でこそ養われていくのです。
確かに、子どもたちにとって寮生活というハードルは高いものだと思います。でも子どもたちが友達を求め、自分自身が生き生きと生活できる場所を求めていることも事実です。子どもたちに無理をさせることは禁物ですが、いっしょに考え、悩み、共感することで、お子さんが一歩踏み出す勇気を与えることは親御さんの役割でないかと思います。